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富士北麓の夏の朝
朝5時、すでに昼のように明るい。「夏の赤富士を撮ってやろう」と意気込んでみたものの、目が覚めると、とっくの昔に陽が昇ってしまい、富士山頂はぼんやりかすんだ真っ青な顔で「今頃起きてきても遅いよ」と軽く諭されているようだ。それでも、早朝は雲も抱かず、上から下まで精悍な裸体を惜しみなくさらして、見るものを魅了する。山頂よりやや下にわずかに白い筋が残っているが、群青色の富士はキリッと引き締まって、下界の暑さを忘れさせてくれる。やがて静寂な世界にゲコゲコ、ミンミンと小動物たちの声がやかましく入ってくる。「カッコー」・・ 「カッコー」・・少し間隔を置いた低音の鳴き声が。「今日はやけに近くで聞こえるなー」と、望遠を覗くまでもなく「いた!」。いつも声だけしか聞こえず、周囲を見回してもなかなか姿が見えなかったカッコウが、すぐ目の前の電線にとまっていた。カラスよりやや小さく、ハトより細長で、胸が仮面ライダーのようにシマシマ模様になっている。たしかに、「カッコウ」の声はそこから聞こえてくる。声と姿となかなかしっくりこない。野鳥は生まれながらに独特の発生しか出来ないが、必要な発生が出来れば充分なんだろう。それがなぜ「カッコー」なのかと考えさせられる声と姿の違和感があった。本当に鳴いている姿を見ないでカッコーの声だけから違う姿を想像していたからかもしれない。もっとも、その姿が描けるわけではなく、はじめて本物を見たことによる、想像との差異がもたらす違和感なのだから、次のときには、全く違和感は消えているのかも知れない。初夏は子育てのシーズンなのだろうか。親鳥と同じぐらいの大きさに見えても、羽を広げた格好はぎこちない小鳥にせっせと餌を運ぶ姿があちこちで見られた。電線にずらりと並んだツバメたち。良く見ると、みんな親鳥に向かって口を広げている。多産なんだろうツバメは子供も大勢で親鳥も大変そうだ。カワラヒワは子供が一羽しか見えなかった。親を独占して、なんとなく親のほうがたじたじしているようだった。人間社会とおんなじような親子の姿を想像したのは、著者が人間だからだろう。初夏の朝、富士北麓の野鳥たちは今年もまた富士に抱かれて生の営みを続けていた。

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