死後の世界

人は死によって終わる。
では、死後の世界はないのかと言うと、私はあると思う。
どこにあるのか、それは、残った、私たちの中にある。
今年も私は友人を亡くした。でも、彼のことは私の中に残っている。
彼とは高校を卒業して以来、あったのは数回だけだった。
だが、高校のとき親しくして以来、数十年ぶりに会っても
親しさは変らず、ずーっと続いていた。
今年彼と会った時、彼は棺の中だった。
彼からは無言のメッセージしかなかった。
私の中の彼は、昔の高校時代や大学を卒業した後、久しぶりに会った時の彼だ。
祭壇の中央に飾られた彼の遺影は、昔の彼の面影はあるがやや太り、
かっぷくの良い姿だった。私は、その遺影を見ながら昔の彼を
思い起こし、頭の中で彼と会話していた。
もう、葬儀から大分たった。彼の遺骨は荼毘に付され
山の中腹にある明るい墓地に埋葬された。
でも、私の中では、昔の彼が、私と会話している。
だから、彼の死後は私の中にある。
私の中では、時間が止まり、距離もない。
いつでも、彼に会うことができる。
私の父や義理の父も既に他界して久しい。
でも、いつでも、彼らと会話できる。
死後、彼らは死から開放される。
残った私たちの中に永久に存在する。
死後の世界は、生きている私たちの中に
時間も空間も超越した世界として存在する。
だから、どんなに短い命でも、また、どんなに長命であっても
平等に存在する。
今の私が、死後の世界に存在する。
子供の中に、友人の中に、もっともっと多くの人の中に。
だから、私は今を大切に生きる。大切に生きたい。

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