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富士山と人(3)縄文時代の配石遺構は語るか

富士山を意識し始めた配石遺構

                  縄文時代にもあった富士山と人とのかかわり

富士山と人目次
 ストーンサークルと表現すると、なにやら天文学的意味合いを帯びてくる。しかし、縄文時代のストーンサークルは、配石遺構と呼ぶ方が適当なほど配石の形がさまざまで推定される利用法も色々考えられている。なかでも石を料理や住居のために配石した名残と考えられるものが多く、祭祀のためと思われる配石遺構もあるが明確な用途は今後の研究を待たなければならないと言えるものが多い。
形には円形のものもあるがコの字形や四角形、円弧などさまざまな形状がある。規模も数人の住宅程度の規模から、直径50mもの大きさのものまで様々ある。富士山麓周辺でもいくつか発掘されている。
これら縄文時代から古墳時代にかけて造成された配石遺構は、人と富士山との関係を物語ってくれるのだろうか。今回は、縄文時代の配石遺構を取り上げ、人と富士山との関係を調べてみたい。

人と石との関わりは旧石器時代から綿々と続いて、発掘された石器は当時の生活の様子や交易範囲など、さまざまな情報を現在に伝えてくれる。配石遺構もその一つで川原石などを用いて住居の外周や墓、祭祀場、かまどなどさまざまな生活上の施設を形成したと思われる。富士山麓の配石遺構の中には富士山の溶岩を配石の材料に用いたものもあり、配石遺構と富士山との関係も示唆している。
このような配石遺構が出現するのは縄文時代前期で今から6000年程前になる。縄文時代中期になると集落の大規模化とともに、配石遺構の規模も大きくなり、北海道を含め東日本全体に多く見られるようになる。
富士山麓でも配石遺構は多く見られる。富士山麓周辺の代表的な配石遺構は山梨県都留市牛石遺跡、静岡県富士宮市千居(せんご)遺跡だ。牛石遺跡は山梨県都留市の桂川と大幡川の合流する段丘上に作られていて、富士山頂を眺められる見晴らしの良い集落だったと思われるが、現在では埋め戻されているので記録でしか知ることができない。この配石遺構は円形をしていて、直径50mに及び、配石遺構の内側には殆ど遺物がなく、外側に埋甕が埋められているなどの様子から、祭祀場など当時の人々にとって重要な意味を持つ場と考えられている。当時富士山は滑川溶岩を排出した噴火(4100年程前)、都留市久保地遺跡を襲った火山灰を降らせた噴火など激しい噴火を繰り返していたと考えられ、この配石遺構に富士山との関連もあるのではないかと予想される。
静岡県富士宮市の千居遺跡はストーンサークルではないが、直線状に配石された数本の配石を串刺しのように直角に交わる直線状に富士山を見ることができることから富士山を意識した配石遺構ではないかと考えられている。
この2遺跡の他にも山梨県で旧中富町(現身延町)の平須遺跡、都留市尾咲原遺跡都留市中谷遺跡大月市塩瀬下原遺跡、静岡県で三島市源平山遺跡、修善寺町大塚遺跡、上白岩遺跡などの配石遺構が知られている。
この内、三島市源平山遺跡では柄鏡形敷石住居の配石の中央部と入り口両脇に富士山の溶岩が使われており、富士山の溶岩に特別な配慮をした構造となっている。
当時の人々が天空を覆う火山灰や激しく噴出する溶岩流に、恐れや畏怖の念を持って、鎮めを願っただろうと思うことは自然の成り行きだろう。当時の配石遺構が、それと何らかの関連を持つものと考えるのもまた、自然のことだろうが確証的なことは、今後の研究を待たなければならない。
当時の人々にとって、富士山は現在の日本を代表する山として特別な山と意識されていたわけではなく、例えば八ヶ岳山麓の金生遺跡が八ヶ岳を遥拝するかのように配置されているように、富士山も山麓の人々にとって自然の中の特徴的な山の一つとして特別の山だったのではないだろうか。同じ時代に、富士山が全く見えない東北地方や北海道にも多くの配石遺構が存在し、それぞれ日の出の方角など自然の特徴的なものとの関わりを持った造成がされていると考えられるものも多いことから、富士山も自然の特徴的なものの一つとして山麓の人と関わりを持っていたのではないだろうか。
時代が縄文から弥生に移り、稲作のために段丘上から川岸近くの低地に住居を構える頃になると、配石遺構も衰退していく。
富士山は縄文晩期に山頂噴火(2200年前)をした後、側火山を激しく噴出する時代に入っていく。

(つづく)

シリーズの過去の記事

富士山と人(1) 富士山の生成

富士山と人(2) 旧石器時代・縄文時代早期 

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